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【2019年オリキャラオフ会】豪華客船の旅〜No.1

先にプロローグとは申しましたが、
移動しただけなので、ひとまず状況説明と、
ファンタジーの住民に足りなさそうなものとして、
同時翻訳機と一般常識要員にルーとティー、
ついでに裏サポーター、カオスを設定させていただきました。
ファンタジーと言っても、遠い未来として設定しているので、
現代の知識を持ってる存在もあると。
カオスはサポートなので表には出ず、
基本的にいないものとする予定でおります。
故に参加者にいれませんでした。
その気になれば脳内マイクをスピーカーに切り替えるぐらいは出来そうですが。

後は参加者のかたと絡んで、旅の話をすれば良いはず…?
しかし、揃って旅に出たことがなさそう。
大丈夫なのか((((;゜Д゜)))

勝手がよく分かっておらず、
不作法、ご無礼ございましたらご指摘いただければ幸いです。

どうでも良い言い訳
・ボールの出所
先日一度使っただけの名前も出ていない子達です。
猫成分出したかったけど他になくて…
・好奇心が名探偵な猫
深い意味は特にありません。
当方謎解きはできないので、マコト君にお任せします。
・客船乗るなら
言いたかっただけ。ここで使わなかったら機会はなかろうと。
調べた結果を伝えても、うちの取締役が納得せず、
定額払では意味がないと。
だったら話振ってきた客船の方で手配しろや!
と、思いつつ対応しました。






「過去からの招待状ー辿り着いたその先は。」

周りを確認してみる。
全く見覚えのない、何処かの高級ホテルのようだ。
座っているソファも座り心地が良く、
指先が使われている生地のなめらかな感触を伝えてくる。
手に持った招待状をもう一度見てみる。
文面がポールも見慣れたアルファベットに変わっているが、
簡略すぎて、招待状であること、
日時と乗船場所が書いてあること以外、何もわからない。
行き先はシークレットのミステリーツアーって、どういうこと?
もう一度、周囲を確認してみる。
千晴はいる。ティーもいる。膝の上にはルーとキィもいる。
だが、すぐ後ろにいたはずのカオスの姿は何処にも見当たらないし、
どう頑張っても、ここは見慣れたギルド寮の居間ではない。

「え? 何? どういうこと?」
フフッとおかしな笑いが勝手にこみ上げてきて、
座っているのにポールは激しい目眩を感じた。
眉間に深いシワを刻んで、千晴がつぶやく。
「カオスさんかお。また、カオスさんかお。」
うちの魔王は多彩な魔術を扱うが、何より得意とするのが移動魔法で、
こればっかりは真似できないと他の魔王からも一目置かれているそうだ。
ポールが知っている限りでも、呪文詠唱も魔法陣も使わず、
何もないところから突然現れたり、
煙のように消え失せたりと、結構な無茶をやらかしている。
それがどれだけ凄いことなのかを聞けば、
魔法使いの先輩方が揃って目をそらせるので、
相当ありえないと思っていれば良さそうだ。
そんな技術を持つ魔術師ならば、
ポールたちを一瞬のうちに別の場所へ移動させることもできるだろうか。

けれども、ぬいぐるみたちが首を横に振った。
「違うと思うよ。」
「お父さんじゃないと思うよ。」
ルーはぽんとポールの膝から降りると平然と言い、
ティーもゆったりと尻尾を揺らした。
自分たちの父親ではないが、妹分のキィの父親だから似たようなもの。
彼らはそう言って、カオスをお父さんと呼ぶ。
だが、実際の親のように言うことを聞かなければいけないとは思っておらず、
まして、上下関係など欠片も存在しない。
見かけ以上の能力を持ったぬいぐるみたちは、
中身の怪しさを示すかの如く、偉そうに見解を述べた。
「お父さんの魔力を感じなかった。これは別のもの。得体のしれないもの。」
「それに、お父さんがきいたんを危険な目に合わせるはずない。」
当たり前のようにルーもティーもいうが、
その内容にポールは顔を青ざめさせた。
「危険な目にって、ここは危ないの!?」
周囲を見渡しても愛用の槍は疎か、武器になりそうなものは何もない。
腕の中のキィをぎゅっと抱きしめた彼の前で、
ぬいぐるみ達がもう一度首を横に降る。

「危なくはないと思う。魔物の匂いも、近くに火薬とか危険な匂いもしない。」
「でも、得体がしれない。ここはシュテルーブルじゃない。
 今のミッドガルドですらない。」
「ミッドガルドじゃないって、どういうことだお?
 それこそ1000年も前ならまだしも、今、他に大陸は存在しないはずだお?」
畳み掛けるような千晴の問をティーが鼻先で笑う。
「そんなの知らない。でも、確かにここは似ている。
 壁が壊れる前のミッドガルドと同じ感じがする。」
何処か懐かしそうな様子で、ルーがキョロキョロと周囲を見回した。
「ここは似てる。クライのいた時代に似てる。」
「ママ? ママがどうしたんだお!?」
母親の名前に千晴が飛び上がるが、ルーもティーも不愉快そうに鼻にシワを寄せた。
「クレイじゃない、クライ!」
「クレイは全然似てない! クライはもっと美人だった!
 ユーリならいい。」
「ちょっと待った! うちのママが美人じゃないような言い方は聞き逃せんお!!
 ユーリさんとは方向が違うとはいえ、ママだって相当な美人さんだお!!!」
本来、話し合うべき内容とは別の問題に千晴は飛びついてしまい、
ぬいぐるみたちにギャアギャアお説教を始めた。
キィが呆れたようにいう。
「なんで、けんか、すんのかねー?」
「本当だよ! っていうか、やめなよちゃお君!!」
あわあわと状況と合わせて慌てるポールに、揉め事を収める能力は乏しい。
助けを求めて周囲を見回せば、見慣れない格好をした男性が、
こちらを不思議そうに眺めているのと目があった。

『どうか、なさいましたか?』
「ええっと、」
近寄ってきた男性に話しかけられるが、意味がわからない。
伝わっていないことが相手にもわかったらしく、
男性は言い方を変えてきた。
『フランス語なら、わかりますか? それともドイツ語? イタリア語?』
どうやらポールにわかる言語を探しながら、話しかけてくれているようだ。
先程よりもなんとなく判るような気がするが、訛りが酷くて聞き取れない。
「ええと、ええと、」
困った顔の男性への申し訳なさと、
自分の存在を咎められているのではないかとの不安で、
うろたえるばかりのポールに気がついて、ルーがぴょいと前に出る。
『お騒がせして申し訳ありません。なんでもないのです。』
『犬が喋った!?』
「ルー!? 駄目だよ!!」
あまりのことに男性は飛び上がり、ポールもパニックを起こしかけるが、
ぬいぐるみは涼しい顔のまま、シャアシャアと言った。
『私、愛玩用兼自動翻訳機のロボット、ZEMP2019型。
 所有者からはルーと呼ばれております。以後、お見知りおきを。』
『あ、ああ、ロボットだった、いや、でしたか。』
「今、ルーが丸め込んでるよ! 
 ポール君、何でもいいから、ルーに話しかけるふりして!」
「ええ?! まるめこんで、って、いいいい?!」
なんだか納得している男性とルーの前で、ティーがポールを抑え込み、命令する。
「まだ、話は終わってないお! って、あれ?」
漸く千晴も第三者に気がついて、邪魔しないよう自分の口を抑えた。

「ええっと、何を喋ればいいのかな?」
「なんでもいいよ、ルーが勝手に訳すから。」
ポールとティーの会話をさも聞き取ったかのように、
ルーが耳を動かし、サラサラと別の内容を話す。
『因みに私共には、我社の最新技術が使用されております為、
 社名など詳細は企業秘密としてお答えできません。
 ご了承のほど、お願いいたします。』
『そうですか。わかりました。』
「今、色々面倒いから、細かいこと聞くなって言ってる。」
「へえー…って、いいのかな…?」
男性は乗客の相手をするスタッフらしい。
ティーの同時翻訳では、素直に任せていいのか不安になる内容だが、
男性の顔がだんだん落ち着いたものに変わっていくのを、
ポールと千晴は固唾を飲んで見守った。

『それで、なにかお困りのことはございませんか?』
親切そうなスタッフに問われたルーは、
少し考えるように顔を傾け、ポールたちを振り返った。
しかし、何かをすぐに諦め、上手に状況を取り繕いつつ、
必要な情報を引き出そうと試みた。
『実は私の所有者は本来の招待客ではなく、代理なのです。
 それで勝手がわからず、何処へ行くべきか迷っております。』
大きくうなずいたスタッフは笑顔で片手を差し出した。
『そうでしたか。船内で迷われたのですね。
 それならば、私がお部屋にご案内いたします。
 部屋番号、若しくは招待状を確認させていただけますか?』
「招待状、見せろって。」
「うえええ?!」
見せろと言われても持っているのは、
カオスの所有していた、何時の時代ともしれないものである。
ティーに言われて再びパニックになるポールの気持ちを知らず、
キィがひょいとお兄ちゃんの手からお手紙を取り上げ、渡してしまう。
「あい、どうぞ。」
『はい、ありがとうございます。』
一人前の顔をして招待状を渡してきた幼児の愛らしさに、
スタッフは業務抜きで微笑み、
受け取った招待状をくるりと回して、懐から取り出した小さな箱を押し当てた。
小さな箱がピッと小さな電子音を立て、何かを読み取る。
『…はい、407号室ですね。ご案内いたします。』
どうやら内ではなく、裏側に仕掛けがあったらしい。
『ありがとうございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。』
「なんか使えたらしいよ。ついてこいって。」
品よくお礼を言う弟を見ながら、
ティーがフンと鼻を鳴らし、ポールと千晴は口の端を歪めた。
「ええー… 使えたの?」
「本当に、良いのかお…?」
どれだけ戸惑っても、ここで立ちすくんでいるわけにも行かない。
ポールたちはおとなしく、スタッフとぬいぐるみたちの後に続いた。

『…ですので、また迷われた時はいつでもお声掛けください。
 以上で説明は終わりです。
 なにかご不明な点はございませんか?』
『それでは早速、ルームサービスを頼みたいのですが、
 金額が書いていないようです。
 こちらもサービス内と考えてよろしいですか?』
『ええ、勿論。ご存じとは思いますが、お部屋でのお食事やレストランに限らず、
 エステや映画鑑賞などの施設も無料でご利用できます。』
『わかりました。それではメニューを確認の上、改めてご連絡いたします。』
『何かございましたら、何時でもお気軽にご相談ください。』
ルーとなにやら話を終えて、終始笑顔のスタッフが去っていき、
ポールと千晴はその場に崩れるように座り込んだ。
「で、この部屋、勝手に使っていいってさ。」
「お腹が空いたら何でも頼めって。好きなところで遊んでいいって。」
スタッフとの会話を簡略化して、ぬいぐるみ達は事もなげに言うが、
本来の乗客ではないと思うと、そう簡単に割り切れない。
フカフカの絨毯が、さらに罪悪感を誘う。
「なんとか、なっちゃったね。」
「いいのかお。勝手にこんなところに上がりこんで、良いのかお?」
緊張と場違いで、はぁと大きく息を吐いた二人を、
ぬいぐるみたちは鼻先で笑った。
「そんなこと言ったって、仕方ない。」
「今更ぼやいたって、きちゃったものは仕方ない。」
ケラケラと笑いながら、ぬいぐるみたちはポールたちを放り出して、
ベッドの上で飛び跳ね始めた。
「フカフカのベッド! よく跳ねる!」
「フカフカのベッド! よく沈む!」
「ちょっとー お行儀が悪いよ。」
立ち上がる元気もなく、形ばかり注意するポールの横で、
ショックから立ち直れない千晴が嘆く。
「どうしてだお。なんでこうなったお? ママのところへ帰りたいお。」
「おとうたん、いない。」
お兄ちゃんの言葉でキィも父親がいないことに気がついたらしく、
眉間にシワを寄せる。
「おとうたんは?」
カオスの所在を問うキィの質問に答えるすべは、誰も持たない。
ルーとティーが飛び跳ねるのをやめ、ポールと千晴は顔を見合わせる。
返事がないのに、ますます不安を増幅させたのか、
幼児は今にも泣きそうに顔をしかめたが、
何かに気がついたように目を見開いた。

「おとうたん。」
「え?」
後ろを振り返ってみるが、誰もいない。
顔を戻せば、キィはきょとんとした顔のまま、瞬きをし、
そのまま両手を突き出した。
「ん。」
「ああ、だっこね。」
ほとんど条件反射でポールがキィを抱き寄せようとすると、
頭の中で聞き慣れた声が叫んだ。
『ポール! お前、ポールか?』
「カオスさん?!」
いないはずの魔術師の声にポールは叫び、
思わずキィから手を離した。
しんと部屋は静まり返っており、カオスの声など何処からも聞こえない。
「ポール君、どうしたお?」
「いや、よく分かんない…」
訝しげな千晴に問われて首を横に振り、ポールはキィを見つめた。
幼児は不思議そうに彼を見上げていたが、
もう一度手を伸ばして「ん。」と言った。
その手に触れると、もう一度魔術師の声が響く。
『きいこから手を離すな!』
「うわ! すみません!」
怒鳴られて、ポールは謝ったが、
カオスは苛立ちを隠さず舌打ちした。
『くそっ、なんだこのジャミングみたいなの!
 ポール、お前今、何処にいる? いや、千晴やぬいぐるみ共はどうした?!
 近くにいないか? ルー達はいそうな感じがするんだが?』
「います! 皆、無事です!」
ザッザッと周波数の合わないラジオのような音とともに、
頭の中にカオスの声が響く。
『そうか、それならもっと近くに呼べ。
 後、きいこから手を離すなよ。千晴はどうした?
 いるならきいこと手を繋ぐか、触れているように言ってくれ。』
「わかりました。きいたんに触っていれば良いんですね。」
言われた言葉を繰り返すポールに、千晴が反応してキィの手を握り、
ルーたちもひょいとベッドから飛び降りて寄ってきて、
千晴とポールの膝に前足を載せた。

まるで未確認飛行物体を呼び寄せる団体のごとく、
サークルになったポール達の中で、姿が見えないままカオスの声だけが響く。
『よし、全員いるな。相変わらずはっきりとは判らんが…
 とりあえず、無事なんだな?
 怪我をしたり、追い詰められたりはしていないか?』
「大丈夫です。今のところ、身の危険を感じるようなことはありませんし、
 むしろ、安全で親切にしてもらってます。」
『そうか。』
ポールの説明に、魔術師の声が安心したものに変わる。
向こうも相当慌てていたようだ。
ひとまず身内と連絡が取れて、ポールたちも胸をなでおろす。
しかし、カオスも慌てていたということは、
彼にも予想外の出来事だったのだろう。
原因は判るのかとポール達は難しい顔でお互いをみやった。
「カオスさん、なんでこんなことになったんだお?」
『知らん。なんでも俺が分かると思うな。』
案の定、千晴の問いにカオスは冷淡に答えた。
見えない壁の向こうで魔術師が大きくため息をついた気配がする。
『それよりお前らこそ、わかることを報告しろ。
 周りの様子でも、外から見える景色でも、いる場所のことでもなんでも良い。』
「はい。えっと、何処か、高級そうなホテルの中みたいなんですが。
 ルーとティーが、今のミッドガルドじゃないって。
 壁が壊れる前みたいだって言ってます。」
答えるのをポールに任せ、
すっと千晴がキィの手を離して立ち上がると、窓際によって外を覗いた。
そのまま、呻くようにつぶやく。
「海が見える…ここ、船の上だお。さっき見た、写真の中にそっくりだお…」
それを聞いた言葉にならないポールの感情を、
どうやったのか、カオスは読み取った。
『そうか。壁が壊れる前の客船の中ねぇ。何がどうなって、そうなったんだか。
 まあ、いい。ポール、千晴に戻るように言ってくれ。
 こっちに引き戻せないか、試してみる。』
「ちゃお君! カオスさんが呼び戻してくれるって!」
「本当かお! なんでそれを早く言わないお?!」
『試すって言ったの! 出来るとは言ってない!』
早とちりして即座に怒鳴られたが、戻れるなら些細なことだ。

戻れないから、問題なのだ。
再び手を繋いで、しばしの沈黙の後、カオスはあっさりと諦めた。
『駄目だな。
 きいことルーたちはまだしも、お前らを上手く掴めない。』
「そんな簡単に、諦めないでくださいよ…」
『そう言われてもなあ。』
曰く、何かが覆っているような感じがして、
カオスの伸ばした魔力の網が、ポールたちを捉えられないらしい。
『このままだときいこから離れた瞬間、こちら的に迷子になるな。
 何か目印になるようなものがあると良いんだが。
 お前ら、なんか持ってないか?』
何か基点とできるものがないか、
ポールと千晴、キィのポケットの中身を全部出してみる。
しかし、出てきたのはそれぞれのハンカチにタオル、
傷薬が少々と、どんぐり2つにビー玉3つ。
使えそうなのは千晴が工作用に持っていた、
魔力に反応する石、魔応石だが、
作業時に出来た欠片、親指程度が幾つかあるだけ。
唯一、完成品の手のひらサイズがあったが、
これにもカオスは首を横に振ったようだった。

『駄目だな。表面に傷が付きすぎて、中への加工を受け付けないし、
 質が低すぎて下手すりゃ割れる。』
「わー これ、ちゃお君が作ったの? 凄い上手だね!」
「そうだお。でも、これじゃあ駄目なんだお。
 もっと良いのを作って、彼奴をこてんぱんにしてやらないと。」
「えー こんなに上手なのに?」
『おい、君ら、聞いてる?』
どんな状況でも落ち込みすぎないのは彼らの利点であるかもしれないが、
直ぐに真面目さを失い、方向がずれるのは如何なものか。
いや、当人たちは常に真剣なつもりだけにたちが悪いと、
言葉ではないカオスの微妙な心境が伝わってきた。
反省して、改めて目の前の問題に取り組む。
「とは言っても、役に立ちそうなものもないしなあ。」
船の上では採集に出かけることも出来ない。
魔物がいれば倒して、使える素材を入手することもできるかもしれないが、
そのような気配はないと、ぬいぐるみたちは言う。
「困ったなあ。」
「目印になるようなものがないと、ボクらをそっちに戻せないってことかお?」
『それもあるが、何処にいるかわからなくなるから、
 いざって時にサポートしてやれない。
 状況がわからない以上、できるだけ出せる口は出してやりたいんだが、
 どうもお前らの存在が希薄でなー それに。』
一度区切って、カオスは叱りつけるような口調になった。
『ポールたちの存在感が薄い反面、
 ルーとティーから自己主張的なものを感じる。
 お前ら、何か隠してないか?』
「ん?」
「なにも、隠してないよ?」
半分以上飽きてゴロゴロしていたぬいぐるみたちは、
不思議そうに首を傾げたが、カオスは強く言いつけた。
『いいや、絶対なにかある。
 持っているものを出せ。』
「んー…」
全く心当たりがなさそうな顔で、ルーが自分の腹を鼻先でもそもそ擽る。
と、思った瞬間、白いものが何処からともなくポロッとこぼれた。
「あっ! ボールだ!」
一体、何処に隠していたのか。
千晴が驚きの声を上げ、更に強くカオスが言う。
『ほら見ろ! ティー!』
「ほい。」
呼ばれてティーが咥えているものを投げるように頭を動かすと、
やはりボールがぽんと音を立てて転がった。

「二匹とも、何処に隠してたんだい?!」
「何処だろうねー?」
「おかしいねえー?」
つい、ポールも咎めるような口調になったが、
ルーもティーもとぼけた調子で首を傾げるばかり。
「てじなだねえ。」
キィはニコニコ喜んでいるが、今、やらなくてもいいと思う。
『全く、しょうがねえな。っていうか、何だそのボール。』
自己主張の原因ではあるようだが、心当たりがカオスにもないらしい。
「ミミ太と交換した。」
「テンのボールと交換した。」
口々にぬいぐるみたちが、先日遊びに来ていた子猫ではない子猫の名前をだし、
思い切り、カオスがため息をつく。
『彼奴らのか。全く、いつの間に。』
「イッちゃんは半泣きだったから、見逃してやった。」
「ちょっと待って。それ、本当に交換だったの?」
交換という割に物騒な言葉が混ざり、本当に双方納得済みだったのか、
疑問が生じたが、今は見ないことにする。
カオスの指示に従い、ポールが拾ったボールをキィに手渡すと、
幼児の手が青く光った。
『ったく、子供でも神に仕える獅子の持ち物か。不幸中の幸いだな。』
娘を通して、魔術師が何か細工を始める。
あー やっぱりあの子達、ただのペットじゃなかったんだなー
そんなことをを考えながら、ポールも千晴も黙って作業を見守った。

『2つあって良かったわ。ほらよ。』
しばらくして、一つずつ手渡されたボールを、
千晴が期待を込めた目で見つめた。
「これで帰れるのかお?」
『いや、あくまで俺の目印になるだけだ。』
だが、キィと一緒でなくても、カオスと話せるようになるらしい。
また、周囲の様子が伝わるようになる為、会話のフォローも可能、
ポケットにでも入れて、肌身離さず持っていろと言いつけられる。
言われたとおり、ポケットにしまうとフワと温かい風が体を包んだ感覚がして、
キィの手を握っていた時よりも身近にカオスの存在を感じた。
『さて、これで基点も増えたことだし、少し周りが探りやすくなったわけで。
 …ふん。俺の目を塞げると思うなよ。』
ポケットの中のボールが振動し、風が通り抜けたような感覚の後、
小馬鹿にするように鼻先で笑う気配があって。
周囲をスキャニングしたと魔術師は言い、
状況を説明し始めた。
『正確な日付ははっきりしないが、確かにここは壁が壊れる前。
 剣も魔法もない時代の客船の上だな。
 だが、それにしちゃ周囲の魔力が濃い。この時代に魔法的な力はないはずだが。
 どちらにしろ魔法は殆ど使えないだろうし、使うなよ。』
一般的ではないし、バレればまずいことになると言う。
『千晴。万一、使うことになって、誰かに見られたら手品だって言え。』
「わかったお。」
妙な目で見られたり、それが原因で捕まったりするのは嫌だ。
神妙な顔で千晴は頷く。
『後、ルーとティーについて聞かれたら、精巧なロボットだと。
 インスパイアネクストな企業秘密だと答えろ。』
「もう、そうした!」
「もう、そう言った!」
ぬいぐるみたちは大喜びで返事をし、見えないカオスが肩を落としたのが伝わってきた。
『ったく、手際が良いんだか、何なんだか。
 とりあえず、周囲に危険な気配は感じないから安心しろ、と言いたいが。
 一般的な客船にしては何かが変だ。
 俺に知識がない所為かもしれないが、用途のわからない空間が多い。
 バラスト水のタンクにしても、こんな配置はしないだろう。
 なにか無理している感じがするな。それと、誰かに呼ばれたのか、
 元から居た存在なのか、妙な気配を幾つも感じる。
 変な動きをしているのも何人かいるな。
 あと、今回の事件の発端になったのは、多分、その招待状だな。』
机の上においた、招待状に皆の視線が集まる。

『とは言え、俺の持っていた限り、そんな力はなかった以上、
 何らかの要因が重なったんだろうが。』
「カオスさん、ボクら、帰れるのかお?」
状況が判明していくに連れ、不安に耐えられなくなったのか、
千晴が泣きそうな声で問う。
『さあな。』
突き放すように魔術師は答えた。
『なんでこんな事になったんだか、さっぱり分からんからな。
 俺の信念は”死んだものは生き返らない”と”過去には戻れない”なんだが。』
片方だけとは言え、ありえないはずの現象だと不満そうにカオスは呟き、こう続けた。
『だが、”記憶は蘇る”し、”時空は歪む”。
 こういうこともあるだろう。』
「信念は何処にいったんだお。」
「世の中には例外という言葉がありますよね、確かに。」
心から信じているものと反している割には適当な反応に、
即座に入った感想を無視し、カオスは見解を告げていく。
『まあ、何かが覆っていると言っても、そこまで強いものじゃないし、
 妙な気配があるが、それを正そうとする動きも感じるし、
 黙っていれば、いずれ解決する気もする。
 本気で帰ろうともがくか、
 切っ掛けとなったもんがどうにかなれば、戻れるんじゃねーの?』
「そんな悠長な。」
あまりに楽観的すぎて、ポールも泣きそうになるが、
構わずカオスは軽く言った。
『繰り返すが、原因が分からんからな。
 さて、何かに呼ばれたのか、勝手に割り込んだのか、
 ただの偶然なのか、それとも、』
少し、考えるような気配とともに、魔術師は言葉を区切り。
『行ってみたいと望んだが故なのか。』
喉を鳴らすようにククッと笑った。

『まあ、こうなったからには仕方ない。
 ここぞとばかりに怠惰な一時を過ごすなり、
 一時のロマンスを探すなり、船上の美食を食い荒らすなり、
 適当に豪華な客船クルーズを楽しめよ。』
「そんなに前向きになれないんで、
 普通に問題解決に繋がりそうな方法を教えて下さい。」
『じゃあ、問題のない範囲で周辺を歩いてくれ。
 スキャニングしながら動けば、なんか分かることがあるかもしれん。』
「まずはマッピングってことだお。冒険の基本だお。」
『あんまり無理はするなよー 魔法や武器は使えないからな。』
ニコニコしているキィを前に話し合い、ある程度の方針が決まる。
ポールと千晴は気合を入れ直した。
「よし、頑張って、帰る方法を探すぞ。」
「早く帰らないと、ママが心配するお。宿題も片付かんお。」
『真面目だねえ、お前ら。そう、慌てなくても良い気がするんだが。』
カオスが呆れた様子で首をすくめた気配がしたが、
やるべきことを片付けないと落ち着かない。
まずは何処へ行こう、何を目指そうと考えて、
ポールは考え、カオスが客船に詳しそうなことを思い出した。
「それでカオスさんなら、この状況で、まず何をしますか?」
『俺?』
問われて魔術師は戸惑ったようだが、すぐにきっぱりと言い切った。

『俺だったら、まず、旅行保険に入れないか考えるね。』
「保険?」
何処から探索すべきかを聞いたつもりだったポールは首を傾げたが、
カオスは当然のように言う。
『うん。とりあえず傷害疾病の治療費と救援費用。後、断然個人賠責。
 治療費は国内になるのか、海外になるのかでも違うけど。』
「同じ治療の保険なのに国内と海外で違うのかお?」
分かるところだけを拾い、素朴な疑問を千晴が口にする。
『怪我や病気の費用って意味じゃ同じだけどな。
 国内は定額、海外は実損払が基本になる。』
「つまり?」
『決まった金額が支払われるため、治療費が少なければ差額を受け取れるが、
 多ければ足りなくなるのが定額払の国内旅行、
 治療費の多少に関わらず、掛かった分だけ補償されるのが実損払の海外旅行だ。
 国内ならそんなに治療費はいらないと思うが、
 外国に行く場合は健康保険が使えず、治療費が莫大になる可能性が高いので、
 加入をおすすめする。ただ…』
何処まで本当だか知らないがと、魔術師が腕を組んだ気配がした。
『航路が海外に出ない場合は国内旅行保険にしか入れない反面、
 船が外国籍だと医療機関も外国扱いされる為、
 健康保険が使えないという話を聞いたことがある。
 そこは乗船前に確認したほうが良いだろうな。』
だが何よりと、カオスは言う。
『一番大事なのは個人賠償責任保険だ。
 高級な船ほど、高い家具や食器、美術品を飾っているからな。
 恐らく船側も動産に入っているとは思うが、
 万一壊して賠償を求められたことを考えれば加入したほうが良い。
 また、乗客同士で何らかのトラブルを起こした場合も使えるしな。
 自動車や火災のが使える場合もあるが、国外だと金額制限がつく。
 保険期間にもよるが、大して高くないから無制限にはいるべきだ。』

立て板に水を流すような説明に、納得すると同時に二人は問うた。
「カオスさん、なんでそんな事、詳しいんですか…?」
『その招待状ごとカレンダーくれた親戚が、そういう仕事してたんだよ。
 ストレスが溜まるとキレたように説明してくれてな…』
「旅行保険って、途中からでも入れるのかお…?」
『普通は始まる前からが基本だが、途中からでも入れないことはないはずだ。
 ただ、補償はちゃんと確認しろよ。免責あったりするからな。』
ふうと大きく息を吐いて、ポールはゆっくりと腕を上げて伸びをした。
「とりあえず、物壊したり、人にぶつかったりしないようにしながら、
 探索してみようか。」
「うんだお。」
素直に千晴も頷く。
そうして彼らは幼児とぬいぐるみを連れ、部屋の外へそろそろ繰り出した。
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津路 志士朗

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